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医院・クリニックで高級車を経費にする方法

ベンツを経費にする

ドクターから「車を経費にしたい、どこまでなら経費にできますか?」と聞かれることが多くあります。通勤、往診、学会への出張に使う等、クリニックの事業で使用されていれば、もちろん経費にすることはできます。車の購入金額は、耐用年数6年で減価償却を行って、経費にしていきます。車検費用、自動車税、自動車保険料等のランニングコストも経費にして節税を図ることができます。このコラムでは、本には書かれていない、税理士としての実務経験からしか話せない税務調査の実態を説明していきます。

著者:フェイス税理士事務所 代表税理士 高田祐一郎(プロフィールはこちら

4年落ちのベンツは節税になる

中古車ディーラーから「4年落ちのベンツを買うと節税になりますよ」と勧められたことはありませんか?なぜ4年落ちなら節税になるのでしょうか、その仕組みは「償却率」です。

新車のベンツを1,500万円で購入した場合、耐用年数6年の定率法の償却率は0.333になります。購入初年度は、1,500万円×0.333=500万円を減価償却費として経費計上できます。

中古のベンツを600万円で購入した場合、新車登録されてからの経過年数を考慮した「中古耐用年数」を使用します。4年落ちの場合、中古耐用年数は2年です。耐用年数2年の定率法の償却率は1.000になります。そのため、購入初年度は、600万円×1.000=600万円を減価償却費として経費計上できます。つまり、購入金額の全額を購入初年度に経費計上できるわけです。これが4年落ちのベンツを買うと節税になるという仕組みです。

高級車を購入した場合の税務調査対策

医院・クリニックで高級車を保有されている場合、税務調査では使用実態について必ずと言っていいほど質問を受けます。そのため、事前に対策を行って理論武装しておきましょう。

まず高級な車種だからといって経費にできないという判断基準はありません。通勤、往診、出張で使用しているという事業供用実態を説明できるかどうかが重要となります。もし高級車を通勤で使用されているなら、調査日にはクリニック近くに駐車しておきましょう。

個人クリニックの場合、週に5日通勤で使っているなら、減価償却費×5日÷7日を経費として計上することが多いです。ただ、日数按分をせず、全額を経費計上されているドクターもいます。税務調査で日数按分を追及されたという話はあまり聞きませんが、質問された場合には答えられるようにしておきましょう。なお、医療法人の場合は、日数按分まで求められることはないため、減価償却費の全額を費用計上することが一般的です。

クリニックの車として経費処理されたい車はドクター1人につき1台にすることをお勧めしています。ポルシェでも1台なら是認されているという話もよく聞きます。事業供用実態があれば、税務署も否認はできないと思います。仮に2台でも、1台は通勤用、もう1台は往診用と説明できれば全く問題はありません。しかし、ドクター1人で複数の高級車を経費処理されている場合、用途説明がなかなか難しいと思います。

車の運行記録は必要か?

ドクターに事業供用実態の証明として「車の運行記録を残しましょう」と指導する税理士事務所もあります。確かに運行記録までしっかり残していれば、税務調査時にエビデンスとして説得力がかなり高いです。しかし、乗るたびに運行記録を付ける、これはとても面倒ではないですか?診察で日々多忙なドクターが作成するのは現実的ではないと思います。

運行記録を指導する税理士事務所はありますが、これまで税務調査で運行記録の提示を求められた事例を聞いたことはありません。運行記録の有無が、税務調査で問題になることはまずないと考えています。運行記録の作成は手間もかかるため、特に無くても差し支えないと思います。

クルーザーとフェラーリとの非公開裁決

面白い非公開裁決として、クルーザーとフェラーリの経費性について争われた事例があります。この事例では消費者金融業を営む同族会社であるA社が、クルーザーとフェラーリを購入しました。

  • クルーザーの購入目的:取引先の接待、従業員の福利厚生
  • フェラーリの購入目的:社長の通勤、移動、出張の交通手段

税務署の主張としては、社長の個人的趣味により取得したものであり、事業の用に供しているとは認められないとして、同族会社の行為計算否認の規定により、減価償却費を否認した上、購入金額を役員賞与(給与課税)として否認しました。これに対して同族会社A社が反論し、国税不服審判所に持ち込んだ事案になります。

国税不服審判所の最終的な判断は次になりました。

  • クルーザー:否認(ダメ)
  • フェラーリ:是認(経費計上OK)

クルーザー(2,650万円)は会社の事業に供していないと否認されました。その理由は次のとおりです。

  1. 取引先の接待として、乗船させた記録を残していない
  2. 従業員の福利厚生として、利用したと裏付ける記録がない
  3. 福利厚生のための利用規程がない

フェラーリ(2,700万円)は会社の事業に供していると是認されました。その理由は次のとおりです。なお、車の運行記録は作成していませんでした。

  1. 社長はフェラーリで通勤している
  2. 出張旅費精算書により、出張時の移動に利用していると推認できる
  3. 支店を巡回指導する際に使用している

フェラーリが社長の個人的趣味によって選定されたスポーツカーであっても、現実に会社の事業の用に供されていることが推認できる以上は、減価償却費は認められ、役員賞与にはならないと、国税不服審判所が判断し、納税者が勝訴しました。

車を経費計上するために大切なこと(まとめ)

車を経費に計上できるかどうかは、車の車種で判断が変わるものではなく、通勤、往診、出張等で実際に事業に使用しているかどうか、それをきちんと説明できることが重要なポイントになります。車は経費全体に占める割合が大きいことから、税務調査でも重点調査項目となっていると考えられます。そのため、しっかりと事前の対策を立てて、理論武装しておくことが大切になります。

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