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【税理士監修】医院・クリニック開業時の失敗・後悔しない税理士の選び方

医院・歯科医院に強い税理士を選ぶ理由

医療機関の会計税務は、特有の専門スキルが必要です。中小企業ができる税理士は多くいますが、医師の先生の経営のサポートができる税理士はあまり多くはありません。

開業医の先生向けのセミナーを主催すると、もっと早くから医院専門の税理士へ依頼しておけば、電子カルテやレセコンの設備投資減税も受けられたのにと後悔される声をよく聞きます。

医療機関は、他の業種と比べて、損益構造も、開業から事業承継までストーリーも全く異なります。

医療業界が診療科目ごとにドクターを分けているように、税理士にも得意分野、不得意分野があります。医療に詳しくない税理士に依頼すると、節税提案の失念、医院にお金が残らない財務になってしまうリスクがあります。

著者:フェイス税理士事務所 代表税理士 高田祐一郎

医療機関に精通した税理士を顧問にすることで、医療特有の経営のアドバイスや節税提案を受けることができます。具体的には次のような内容になります。すでに顧問税理士がいる先生も、こういった提案を受けられているか考えてみてください。

  • 開業2年程度は、集患に苦労するため、借入金返済を意識した資金繰りの管理を徹底する
  • 1日あたり何人の患者を集めたら良いか、損益と収支の分岐点売上を試算する
  • 他院の財務指標と比較し、コストコントロールを行い、医院にお金を残すアドバイスを行う
  • 年間社保収入が5,000万円以下のときは、医師の優遇税制である概算経費率を活用する
  • 電子カルテやレセコンを購入したときは、設備投資減税とIT導入補助金を活用する
  • 安定的な利益により税負担が大きくなったら、節税のための医療法人設立シミュレーションを行う
  • 財産形成のための資産運用コンサルティングを行う
  • 事業規模を拡大するための分院展開で、組織マネジメントのアドバイスを行う
  • 親族内承継、親族外承継、役員退職金といった出口戦略の提案を行う
  • 税務調査を未然に防ぐ対策として、書面添付制度を活用する

税理士資格を所有しているかの確認

税理士資格を持っている人に担当してもらいたいと思いませんか?

ドクターとして診察を行うためには「医師免許」が必要です。税理士も税務相談を受け、申告書を作成するためには「税理士資格」が必要です。

しかし、税理士事務所の職員の大半は、税理士資格を持っていません。これに驚かれる先生は多いです。税理士事務所は、所長に税理士資格があれば、申告書に署名することができるため、従業員に資格が無くても問題ないわけです。

税理士事務所の職員で、税理士資格を所有している人は、全体の10%程度です。名刺に「税理士」と記載があれば、税理士資格所有者ですが、名刺に「税理士」と記載がなければ、無資格の従業員です。

税理士試験は、毎年2%程度しか合格できず、合格までには平均5年から7年という長い道のりであり、忍耐力が必要なため、途中で税理士になることを諦めてしまう人が多くなっています。

しかし、ドクター同様、個人のスキルやノウハウがお客様満足度に直結するため、税理士試験という難関試験を突破している人の方が、管理会計のスキルが高く、法人税、所得税、消費税、相続税に精通していることは言うまでもありません。さらに、税理士資格所有者の方が、向上心が高く、責任感が強い人が多いと思います。

大手税理士法人の特徴

大手税理士法人へ依頼するメリット

大手税理士法人へ依頼するメリットとして、組織として高度な税務への対応力が高く、多くの医療機関・多様な人材を抱えることにより多くのノウハウが蓄積していることが挙げられます。

社会医療法人への移行、特定医療法人への移行、相続・事業承継対策、M&Aといった難解な課題に対しても、過去事例が蓄積しているため、円滑な対応が可能です。内部チェック体制や研修制度も充実しているため、依頼したときの安心感は大きいと思います。

大手税理士法人へ依頼するデメリット

デメリットとしては、顧問料の高さと若手担当者のスキルのばらつきが上げられます。従業員の給与水準が高く、退職金や福利厚生も完備している大手税理士法人は、必然的に顧問料が高くなります(月額6万円~)。

毎年何百件と顧問契約が増えますが、税理士業界は人材不足の状況にあります。売り手市場で採用が難しい中、優秀な税理士はどんどん独立していきます。マネジャークラスが担当すると顧問料に見合う高いパフォーマンスを発揮します。しかし、若手担当者が担当しても、顧問料が安くなるわけではないので、顧問料とサービスのバランスが取れずに、不満につながるケースもあります。

大手税理士法人への依頼が適したケース

医療機関が、高い顧問料に見合うノウハウや高度な税務サービスを受ける必要のある規模の場合には、大手税理士法人に依頼された方が良いと思います。具体的には次のような医療機関です。

  • 病院や老健を所有し、高度な税務スキルが要求される規模の医療法人
  • 分院が多数あって税理士事務所のマンパワーによるサポートが必要なクリニック

個人税理士事務所の特徴

個人税理士事務所へ依頼するメリット

個人税理士事務所は差別化戦略を取っているところが多く、クラウド会計、財務コンサルティング、相続、医療機関、公益法人といった特定の専門分野を打ち出しています。

特に、大手税理士法人の管理職経験者が代表者である場合、リーズナブルな顧問料(月額4万円~)で、大手並みの専門性の高いサービス提供を受けることができます。

代表税理士が定期的に関与してくれる事務所に依頼すると、代表税理士は、開業経験、経営経験もあるため、税金のアドバイスだけではなく、経営に役立つ提案も期待できます。

個人税理士事務所へ依頼するデメリット

大手税理士法人に比べれば、内部チェック体制、従業員数といった人材面では劣ります。大手のように研修制度が充実していないことから、担当者のスキルのばらつきも大きくなります。

お父様から事業承継をされた若い先生からは、顧問税理士が60代で相談がしにくく、決算申告時期になるまで、1年間の損益も税金も分からないといった不満を聞くこともあります。

個人税理士事務所の価値は、代表税理士のスキルや人間力にかかっているため、代表税理士のキャリア、関与頻度、医療機関の支援実績を確認し、自院に合った税理士かを見極める必要があります。

個人税理士事務所への依頼が適したケース

  • 税金の相談だけではなく、経営もサポートもしてほしいクリニック
  • 代表税理士と経営課題を共有しながら、伴走型支援を希望されるドクター

1つのクリニックを運営されるステージであれば、難解な税務論点は生じにくく、経営の相談が多くなるため、開業経験、経営経験のある同世代の代表税理士に対応してもらった方が良いと思います。

自院の成長ステージに合った、税理士事務所や担当者にサポートしてもらうことで、財務力の高いクリニックへと成長していくことでしょう。

税務署OB税理士への依頼の必要性

税務署OB税理士に依頼するメリットは、税務調査対策になりますが、近年、税務調査が減少傾向にあります。過去の税務調査で脱税履歴のある医療機関へは、定期的な調査がありますが、ミス程度しか見つからなかった医療機関に対しては、それ以降、調査の可能性はかなり低くなります。

税務調査は、個人クリニックでは10年1回程度、病院では5年に1回程度しかありません。特にクリニック規模で、経営サポートを苦手とする税務署OB税理士に依頼するメリットはないと思います。

税理士選びを失敗しないための5つの質問

結論として、どのように税理士を選べば良いのでしょうか?

3社程度の税理士事務所と面談をしてみて、税理士としてスキルが高く、ご自身との相性が良く、経営の悩みを一緒になって考えてくれる税理士を選ばれるのが良いと思います。

どんなに魅力的な税理士事務所と顧問契約を締結しても、事務所自体と接する機会は少なく、ほとんどの相談を担当者にすることになります。

良い治療をしてくれるドクターに患者さんが集まるように、良い提案をしてくれる税理士にお客様が集まります。最終的には、やはり人(担当者)で判断されるのが良いと思います。

しかし、初見での見極めは難しいため、税理士事務所の概要やサービス内容を聞いた後、次のチェックリストを参考に、担当者となる人に質問して、総合的に判断してみてください。

  1. 当院をメインで担当するのは誰か?
  2. 担当者は、税理士資格を所有しているか?
  3. 担当者の税理士事務所でのキャリアはどの程度あるか?
  4. これまでどのような医療機関を担当してきたか?
  5. これまで医療機関に対してどのような提案してきたか?

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