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【税理士監修】医療法人がMS法人を作るメリットはあるのか?

医療法人がMS法人を作るメリットはあるのか?

個人クリニックとMS法人の場合、最高税率55%の個人クリニックから、最高税率33%のMS法人に、業務委託料等の支払いにより所得移転することで、20%以上の税率差によるメリットが発生します。

しかし、医療法人のクリニックがMS法人を設立する場合、同じ法人なので、所得移転することにメリットが出るのでしょうか。

200法人以上の経営者様へサポート実績のある医療専門税理士が実務的な内容を解説いたします。

著者:フェイス税理士事務所 代表税理士 高田祐一郎

法人税の軽減税率のメリット

医療法人の税率は利益800万円以下が20%、利益800万円超が30%になります。MS法人の税率は利益800万円以下が23%、利益800万円超が33%になります。医療法人の保険診療には法人事業税が課税されないため、医療法人の方が3%程度安くなります。

そのため、医療法人の損益計算書の利益が800万円を超える場合、超える部分をMS法人に所得移転させることで、医療法人とMS法人の2法人で、軽減税率800万円の枠を使えることになります。節税効果の上限としては年間56万円程になります。

交際費800万円の枠のメリット(持分なし医療法人は注意!)

医療法人は、交際費が年800万円までは全額損金算入されます。MS法人も同様に、交際費が年800万円までは全額損金算入されます。医療法人とMS法人の2法人で、交際費800万円の損金算入枠を使えることになります。

平成19年以降に設立された医療法人はすべて持分なし医療法人で、交際費について特殊な取扱いがあります。

持分なし医療法人の場合、「(決算書の資産の部の合計-決算書の負債の部の合計-当期利益+当期欠損)×60%」が1億円以下のときのみ、交際費800万円の損金算入枠を使えることになります。

つまり、医療法人の純資産の金額が1.6億円を超えてくる場合には、交際費800万円の損金算入枠が消滅することを意識する必要があります。

交際費800万円の損金算入枠が使えなかったとしても、社外の方との飲食代でひとりあたり1万円以下の場合は交際費ではなく会議費で処理できます。1万円超の飲食代も1/2までは損金算入できることになっています。

医療法人の純資産の金額が1.6億円を超えてくる場合には、「社外の方との飲食代でひとりあたり1万円超の金額の1/2部分、金額にかかわらず贈答品・ゴルフプレー代等」が損金にできないことになります。

そのため、医療法人の純資産の金額が1.6億円を超えてくる場合、MS法人を設立することで、交際費800万円の損金算入枠を確保することができます。節税効果の上限としては年間240万円程になります。

次世代への所得分散

MS法人を設立して、子どもを役員として役員報酬を支払うことで、所得分散させることができます。医療法人で子どもを役員にしようとすると、都道府県への行政手続きが必要となります。MS法人は株式会社等の単なる民間の会社であるため、内々で役員就任が可能です。

先述の通り、医療法人とMS法人は税率がほぼ同じため、医療法人からMS法人へ所得移転してもで、そこまでメリットが出るわけではありません。しかし、所得移転後、子どもへ役員報酬を支払うことで所得分散を行えば、所得税率の低い子供で給与収入を受けることができます。医学部の授業料の補填や将来的な相続税対策にもなります。

MS法人は自由な経営が可能

医療法人は医療法により収益業務ができないことになっていますが、MS法人は収益不動産を購入、投資信託の購入等、自由に資産運用をすることができます。

また、医療法人は理事長貸付や配当を行うことができないですが、MS法人では適正な金利を取れば代表者貸付けや配当を行うことができます。

医療法人とは別に、MS法人というもうひとつの財布を持てることになります。

消費税というデメリット

MS法人へ所得移転する金額が年間1,000万円を超える場合、MS法人で消費税の納税義務が発生します。所得移転した金額の10%の納税が発生してしまいます。ただし、MS法人の売上が年間5,000万円以下であれば、簡易課税を使うことができ、所得移転した金額の10%のおおよそ半分を納税することで済みます。

そのため、自由診療の多い医療法人を除いて、MS法人へ所得移転する金額は、年間1,000万円以下または5,000万円以下に抑える必要があります。

医療法人とMS法人の役員は兼務できない

厚生労働省通知「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」 において、「医療法人の役員については、原則として当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと。」と記載されています。

基本的には、医療法人の理事長や理事が、MS法人の役員に就任することはできないことになっています。ただし、医療法人の社員とMS法人の役員は兼務することが可能です。

税務調査事前対策が必須

医療法人とMS法人は同族間取引になるので、税務調査においては、MS法人で本当に業務を行っているのか医療法人から支払う対価の金額には妥当性があるのかについて、調査を行われます。そのため、税務調査で論理的に説明できるようにMS法人のスキームを作っていかなければなりません。

医療法人やMS法人のことは、200法人以上の経営者様のサポート実績のある医療専門のフェイス税理士事務所へご相談ください。

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