• 医療・クリニック・病院サポート
  • クリニック・医院・歯科医院開業支援

【税理士監修】歯科医院が開業時に取り組むべき集患戦略

歯科医院を取り巻く外部環境

歯科医院を取り巻く外部環境の変化として下記があり、専門性を打ち出した差別化戦略がますます重要になっています。

  • 年々日本の人口減少と高齢化が進み、2065年には人口9,000万人を割り込み、65歳以上人口は38%台の水準になると推計されている
  • 歯科診療所の患者数に占める65歳以上の割合は4割以上である
  • 国民医療費は年々増加しているが、歯科診療医療費は横ばいが続いている
  • 歯科診療所の施設数は2021年時点で67,899件、横ばいが続いている
  • 歯科診療所の推定患者数は、2014年をピークに緩やかに減少している
  • う蝕の患者数は年々減少後横ばい、慢性歯周炎の患者数は大きく増加している(下図)

著者:フェイス税理士事務所 代表税理士 高田祐一郎

 

患者ニーズの変化を捉える

歯科医院業界で勝ち抜くために、まずは患者様の購買決定要因(Key Buying Factor)を把握する必要があります。参考になる資料として、日本歯科医師会の「15歳〜79歳の男女10,000人に聞く歯科医療に関する生活者調査」があります。この調査結果において、歯科医院に求めることとして、全体・30代、40代、60代・70代では「自分の歯をできるだけ残すような処置をしてくれる」、10代、50代では「治療技術が高い」、20代では「治療が痛くない」がそれぞれトップとなっています。

この調査の5年前の調査では、「治療技術が高い」がトップでしたが、現在は「自分の歯をできるだけ残すような処置をしてくれる」がトップとなっています。つまり、治療技術が高い(治療)から、自分の歯をできるだけ残すような処置(治療+予防)へと患者ニーズが変化していると言えます。

しかし、ひとりひとりの患者ニーズは異なります。来院された患者様へのアンケートやヒアリングにより、来院動機や当院に期待されることを事前に知っておくことで、患者様ひとりひとりとの関係性の質を高め、よりニーズに合ったスタンスで、治療や予防を提供することができます。

歯科医院のポジショニングを考える

競合の歯科医院は周辺に多く存在し、お客様の選択肢は多くあります。歯科医院が成功するためには、当院のポジショニング=強みを明確にすることが重要です。

例えば、開業して間もないリソースが少ないクリニックであれば、予防重視または矯正専門という専門性の高さを打ち出す、治療を中心として子どもから老人まで家族全体をケアできることをアピールするといったポジショニングが考えられます。

院長先生のこれまでのキャリアを含めて、改めて院長先生や自院の強みを洗い出し、近隣の競合と明確に差別化できる強みの2軸を考えてみましょう

(強みの例)全ての治療に対応(口腔外科)、歯科診療所がきれい、駅から近い、住宅地の中心にある、駐車場が広い、急患に可能な限り対応、メンテナンス患者が多い、待ち時間が少ない、歯科衛生士等のスタッフの質と量が充実、歯科博士を取得、ユニットが多い等

顧客生涯価値(Life Time Value)の最大化を目指す

マーケティング戦略としては、①新患の獲得、②既存患者のリピートになります。

新患の獲得については、ポジショニングを明確したホームページの制作、SNSの活用、看板、クチコミが中心となってきます。

既存患者のリピートについては、治療ではなく、予防を中心とした収益化を目指す必要があることから、患者様ひとりあたりの顧客生涯価値(Life Time Value)を高めていく必要があります。

歯科医院でLTVを伸ばすには、治療に来られた患者様を、予防に誘導し、情報提供によりリピートを促進して、収入機会を増やすことが重要となります。ひとりの患者様を一生診ていく中で、予防だけではなく、矯正やインプラント等の自費へも繋げていきます。

既存患者のリピートについては、次の目標設定が目安になります。

  • 治療に来られた患者の予防患者への移行率 80%超
  • 予防患者が次回の来院予約へ繋がる継続率 85%超

既存患者のリピートを増やした結果、歯科衛生士の目標としては1人あたり月60人の患者が目安となります。歯科衛生士の技術を高めるために、年間予算を設定して、外部実技研修に参加させましょう。

予防患者の増患対策

治療に来られた患者様に対して、予防患者への移行、リピートを促すためには、例えば、次のアクションが必要となります。

  • 年齢とともに歯が失われていく過程を説明して、予防の必要性を説く
  • 位相差顕微鏡により口腔内の菌を見せて、予防の必要性を感じてもらう
  • ホワイトニングをしてきれいな白い歯になった患者へ、その維持のために予防も推奨する
  • 将来歯をどの程度残したいかを質問して、目標設定をしてもらい、目標達成を一緒にサポートすると伝える

予防をすることで、健康な口腔内にするという歯科医院の目的が達成されることを、歯科衛生士等のスタッフ全員に理解してもらい、積極的に勧めてもらうことが必要となります。院長先生だけで対応するのではなく、スタッフを巻き込んで、医院=チームで盛り上げていきましょう。

そのためには、普段からスタッフ満足度を高め、医院のビジョンを明確にして、ベクトルを合わせておく必要があります。

まとめ

競争の激しい歯科医院業界を勝ち抜くための重要成功要因(Key Success Factor)は、①近隣の競合に対して強みを明確にしたポジショニングを取って新規患者様を獲得し、②予防、自費診療に繋げて顧客生涯価値(Life Time Value)の最大化を目指すことになります。

フェイス税理士事務所は、ビジョン、経営戦略、マーケティング戦略のサポートも行っています。

税理士の医院開業サポート(無料相談)はこちら