【税理士監修】クリニックの追加融資が通らない?銀行が見る「事業主貸」と「元入金」
追加融資の際に問題になる事業主貸と元入金
銀行から追加融資を受ける際に、銀行担当者や保証協会から内容を確認される貸借対照表の項目に「事業主貸(じぎょうぬしかし)」と「元入金(もといれきん)」があります。
この2つについては、会計上は収益でも費用でもなく、損益や税金計算に影響しないため、重要視していない税理士も少なくありません。しかし、クリニックは個人事業と言えども、何千万も利益の出る業態であり、融資規模も大きくなります。追加融資の審査の際にトラブルになることがあります。
今回のコラムでは、融資審査の壁となりやすい「事業主貸」と「元入金」の正体と、金融機関からスムーズに追加融資を受けるための対策について解説します。
著者:フェイス税理士事務所 代表税理士 高田祐一郎
事業主貸はプライベートな出金の累積
個人クリニックの事業用口座から、次のような出金をした場合、事業の必要経費ではないため、会計上「事業主貸」として処理します。
- 院長の生活費の引き出し
- 院長の個人的な趣味や旅行等のプライベートな支出
- プライベートの銀行口座への資金移動
- 資産運用のための出金
- 小規模企業共済掛金の支払い
- 生命保険料やふるさと納税の支払い
- 所得税や住民税の支払い
- 社会保険診療報酬から天引きされる源泉所得税の計上
つまり、クリニックの経営上の必要経費とならない支出が、事業主貸に蓄積されます。決算を迎えて事業主貸が2,000万円以上となることも多いです。銀行は追加融資を行う際、事業主貸が膨らみ過ぎていると「私的な経費の流出が多すぎるから資金繰りが悪化しているのではないか?」と懸念して、内容確認を行ってきます。
事業主借は院長からの借入金
事業主貸と対になる勘定科目として「事業主借(じぎょうぬしかり)」があります。こちらは院長の個人口座からクリニック口座へ資金補充のための入金をしたり、税務署から還付金等の入金があった時に増加します。
貸借対照表において対応する勘定科目になり、比較すると次の通りです。事業主貸はクリニックから院長先生個人への貸付金、事業主借は院長先生個人からの借入金と整理することもできます。
- 事業主貸の増加要因:事業用口座からのクリニック経費にはならない出金
- 事業主借の増加要因:事業用口座へのクリニック収益にはならない入金
元入金は会社の純資産に相当するもの
銀行や保証協会が必ずチェックする貸借対照表の項目として「元入金」があります。元入金とは、貸借対照表の資産から負債を控除した「純資産」に相当するものです。個人クリニックの場合、元入金の金額は次の算式で求めます。
- ①年初の元入金の残高 + ②今年1年間のクリニックの利益(青色申告特別控除前の所得金額)- ③年末の事業主貸の残高 +④年末の事業主借の残高で求めます。
計算の結果、元入金がマイナスになっていると、資産よりも負債が多い状態、つまり債務超過のような扱いを受けます。債務超過とは倒産リスクの高い状態のため、銀行は融資に対してネガティブになります。
銀行から追加融資を受けるための対策
銀行が追加融資をする際に問題視する状態は次の2つです。
- 事業主貸の過多:事業主貸が多いため、院長が私的な資金利用が多すぎて、資金不足になっているのではないか?
- 元入金のマイナス:元入金がマイナスまたは少額のため、追加融資をした場合に、返済原資を確保できないのではないか?
これを防ぐため、弊所では事業主貸と事業主借は対応する項目であるため、決算時に事業主貸と事業主借の相殺を行っています。両者は対になる項目であるため、適切に相殺処理を行うことで、決算書上の「事業主貸」の金額が過大に見えないよう調整します。
また、決算時に元入金がマイナスまたは少額になることが見込まれる場合、その原因を解明します。次に、事業主貸の発生を抑制したり、簿外となってしまっている資産を計上することで、元入金を適正なプラス数値にできないかを検討します。弊所では、院長先生と密にコミュニケーションを取りながら、金融機関からの評価を高める決算書作りをサポートしています。
フェイス税理士事務所のクリニックサポート
フェイス税理士事務所は、10年以上かけてクリニック融資に力を入れる多くの金融機関と連携して良好な関係を構築しています。そのため、銀行審査の内部事情を把握していることが強みになります。
これからクリニックを開業されたい、医療専門の税理士からのアドバイスがほしい場合は、ぜひ一度ご相談ください。誠実にレスポンス良くサポートいたします。
